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美しい国へ(安倍晋三)

颯爽と戦後生まれの首相が誕生し、支持率は60%を超え、さらには就任早々、アメリカではなく中国訪問と言う演出と戦略を持って船出したのもつかの間、今や30%を切る支持率と半数を超える不支持。ある意味、時代のスピードが速くなっている証拠ですね。

私も期待していた首相がこうも弱く脆いものかと批判したくなりますが、その時に、やはり原点であるこの本を読んでおかないといけないだろうと、続投宣言をした今、手にしました。

「美しい国」とか「戦後レジームの脱却」とか、最近は聞かなくなり、「新しい国造り」とか「国民の目線になって」とかいう路線になりつつありますが、それは選挙に負けたためであり、本来の政治思想としての重点項目は、異なるのでしょう。本来は「美しい国」(それがなんであるかは、この本を読んでもよく分からないです(笑))であり「戦後レジームからの脱却」(これも難しい(笑))が安倍さんがやりたいことなんでしょう。

その中でも、レジームとはわかりにくい言葉です。以前の仕事でこの言葉を外国の通信関係の仕様書の中に見つけ訳しづらかったことを覚えていますが、この場合は戦後体制と言った方がより近いでしょうか。
しかし、安倍さんが言うここでの戦後レジームとは、イデオロギーの対立などと言う意味ではなく、むしろ戦前の国家主義的な考えに対して、戦争が負けたことでそれを嫌悪するような風潮を「戦後レジーム」と言うのではないかと読めたのです。つまり、戦前の国家主義の中にもいい点はあったじゃないか、それを戦争につながるからとか諸外国の間違った批判で放棄してはいけないということでしょう。安倍さんの目指す憲法改正もその点にあるのでしょう。

ただ、首相となる人が書いた内容としては多岐にわたるために(たとえば小泉さんが書くなら郵政民営化だけに絞って書くことになったかもしれません、そんな手法もあったでしょう、安倍さんなら拉致問題だけでも、日米安全保障問題だけでもいいのに)全体的にひとつひとつは表皮的内容になりがちで、また、都合のいい情報からの結論の導きもみられて、今の安倍さん自身の問題がここにも出ているような感じを受けます。

年金に税金を使うかどうかという問題でも、議員年金の話題はどこにもないし、「年金を税金でまかなう=消費税値上げ」を既定路線に書かれています。
また、アメリカの共和党と民主党の話でも、民主党の例でケネディの演説を出しそこに「戦う」という言葉があるということで、民主党が決してソフト路線ばかりでないということを書いています。この文章を読んだ時に「当時の厚生大臣は菅さんだった」と言う言葉を思い出したくらいです。

マスコミにも指摘されることですが、安倍さんは歴代首相とは異なり「私の内閣」とよく口にします。「わたしの」「わたしが」と言う言葉が多いのは事実です。この本で「わたしが政治家を志したのは、ほかでもない、わたしがこうありたいと願う国をつくるためにこの道を選んだのだ」と書かれています。安倍さんの生い立ちを思うと、なるほど、こうした考えを持つ環境にあったのかもしれません。しかし、「私がこうありたいと願う国」であって、国民不在とまでは言わないけど、国民の意思が希薄であることは間違いありません。ここに参議院選挙敗退や支持率低下でも辞めない理由になっているのかもしれません。

そもそも、高度成長期に生まれ育って、政治家の一家で育ち、あまり不自由のない生活を過ごされたことは想像に難くないですけど(そこがプリンスであり毛並みの良さであり、国民的人気を取れると言う自民党の思惑と一致するのでしょう)、そのために国民不在になりやすい面を持っていることも事実でしょう。高度成長期ならいいでしょうけど、小泉政治で一度「ぶっこわされた」ものに上に、美しい国を作るには、その前に基盤作りが必要だったということでしょう。再チャレンジなどの施策もありますが、そのあたり難しいかじ取りであることは小泉さんの後だから同情します(^^;。

小泉さんは党内の支持はなかったために国民に目を向けざるを得なかった、その国民の声を利用して自分が党内の人材を使うと言うスタイルでした。はじめから人が集まる安倍さんとは政治思想が似ていても政治スタイルが違っていましたし、そのために人を使いきることができずに、いつまでも大臣を更迭できない首相になったのかもしれないとまで想像してしまいます。

いずれにして、所信表明ではないのですから、もう少しひとつひとつを掘り下げて多面的に評価したうえで自分の方向性を示すような本も必要かと思います。その意味では、他に安倍さんについて書いた本があれば見てみたいものです。理想は高いのですけど少し幼稚で政局に弱い、そんな人物像が浮き彫りになり、これは小沢さんには勝てないかもと思ったりもしました。

と、いろいろ書かせてもらえるような内容の本であったのと言う意味では、大変お勧めの本です(^^;。内容的には賛同できない点や危うい点もあるのですけど、それも含めて、知っておいて損はない本かも。

ああ、短い本なのにたくさん感想を書いちゃった(笑)。

評価はしなくていいけど、あえて書くなら★★★★☆くらい。

PS
三丁目の夕日にノスタルジーを感じる首相と言うことで、気持ちは分からないでもないけど、妙に国民感覚とずれている点が支持率低下につながっていると思います。わかりにくさが全面に出いているのは、実は内部ある幼さや優しさが原因ではないかとも感じました。いずれにしても、支持政党で二大政党の時代を期待したい私としては、今は民主党に頑張ってもらいたいところです。

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